
カスタマージャーニーマップとは?作成の目的と作成ポイントについて解説
サービスやアプリの提供において、「機能は揃っているはずなのに利用が定着しない」「特定の工程でユーザーが離脱しているが、その理由が特定できない」といった課題は少なくありません。
こうした状況を打破し、品質を向上させるためには、個別の画面や機能といった「点」の改善だけでなく、ユーザーがサービスと接触してから目標を達成するまでの一連のプロセスを「線」で捉える視点が不可欠です。そのための有力な分析手法が「カスタマージャーニーマップ」です。
本記事では、カスタマージャーニーマップの定義や構成要素、そしてプロジェクトを成功に導くための具体的な活用メリットについて解説します。
1. カスタマージャーニーマップとは
カスタマージャーニー(Customer Journey)とは、ユーザーがサービスを認知し、検討・導入を経て、継続利用や推奨に至るまでの一連のプロセスを指します。
デジタル接点が多様化した現代では、ユーザーはオンライン、オフラインを含め、複数のチャネルを跨いで行動します。このプロセスを時系列に整理し、各段階における行動、思考、心理状態の変化を可視化した図表が「カスタマージャーニーマップ」です。提供者側の想定と、実際のユーザー体験の間にある「乖離(ギャップ)」を特定するための設計図として機能します。

2. カスタマージャーニーマップ作成の目的とメリット
カスタマージャーニーマップとは、ユーザーがサービスを知り、使い始め、定着するまでのプロセスを「旅(ジャーニー)」に見立てて描き出すフレームワークです。ユーザーの行動や心の動きを時系列で並べることで、サービス全体の姿を浮き彫りにします。
このマップを作成することで得られる、主な3つのメリットを解説します。
- サービスの全体像を「一連の流れ」として捉えることができる
個別の画面や特定の機能だけを点として見ているだけでは、サービスにどんなボトルネックがあるかという理由は見えて来ない場合があります。利用開始前から使い終わるまでの「全体の流れ」を線として俯瞰することで、目に見えない落とし穴を発見することに繋がります。 - チーム全員の目線を合わせることができる
プロジェクトには、企画、デザイン、開発、運営など、立場や専門性が異なる多くの人が関わります。カスタマージャーニーマップを共有することで、「誰の、どの瞬間の、どんな悩みを解決するのか」というゴールを一つにできます。共通の「地図」を持つことで、担当者ごとの思い込みや主観によるズレをなくし、意思決定のスピードを飛躍的に高めることができます。 - 優先順位を論理的に判断できる
リソースには限りがあるため、すべての課題に一度に取り組むことはできません。マップによってユーザーの心理的な停滞ポイント(ボトルネック)が可視化されると、「今、どこを最優先で改善すべきか」について、勘や経験に頼らない論理的な判断が可能になります。チームや関係者に対し、納得感のある根拠を持って次のアクションを示すことができます。
3. マップを構成する主な要素
一般的に、マップは横軸に「フェーズ(段階)」、縦軸に「分析項目」を配置した表形式で構成されます。
横軸:利用フェーズの設定

横軸はユーザーがどのようにサービスを知り、導入後、定着や継続を決めるまでのフェーズを記入することが一般的です。
サービスによっては「契約」の前後に「試行(トライアル)」や「導入設定」というフェーズなども含まれてきます。
フェーズの例
- 認知・興味: 自身の課題を解決する手段として、サービスを認識する段階。
- 情報収集:類似サービスを含め幅広く探し、サービス内容や導入事例をリストアップする段階。
- 比較検討: 類似サービスと比較し、機能やコストを精査する段階。
- 評価・意思決定(施行): アカウント作成や初期設定を行い、現場でのトライアル(テスト導入)を通じて最初の機能利用、評価に至る段階。
- 本契約・活用定着: 本契約後、全社展開に向けた初期設定や周知を行い、操作に習熟、日常的な業務や生活に組み込まれる段階。
など
縦軸:分析項目

縦軸には、各フェーズにおいてユーザーがどのような状態で、どのような壁にぶつかっているかを多角的に分析します。
分析項目の例
- 接点(タッチポイント): Webサイト、アプリUI、プッシュ通知、メールなど、ユーザーがサービスと接触する媒体。
- ユーザーの行動: 「検索する」「フォームを入力する」「通知をタップする」といった具体的なアクション。
- 思考・心理状態: 「操作が分かりにくい」「次に何をすべきか不明確」といった論理的な判断や心理的負荷の推移。
- 課題(ペインポイント): スムーズな利用を阻害している要因や、ユーザーが抱いている不安・疑問点。
- 改善の解決策: 課題を解決するために必要な機能改修や、情報提供・サポート体制の改善案。
4. カスタマージャーニーマップ作成の5ステップ
ステップ1:ペルソナ(ターゲット像)の定義
「誰」のプロセスを分析するのかを明確にします。顧客の属性、課題感、サービスに求めている機能などを具体的に定義します。
<ペルソナ設定の方法についての記事はこちら>
ステップ2:ゴールの設定
ユーザーに最終的にどのような状態になってほしいのか(例:特定の業務時間を短縮するなど)を定義します。
ステップ3:行動と接点の網羅
ユーザーがゴールに至るまでの行動を細分化し、それぞれの行動がどの接点で発生するかを書き出します。
ステップ4:心理変容についての記載
各フェーズにおけるユーザーの疑問点や不満点を、実データや調査結果に基づいて配置します。特に、期待値と実体験の間にマイナスのギャップが生じている箇所に注視します。
ステップ5:対応策の検討
特定された課題に対し、どのような解決策が有効かを検討し、具体的な改善アクションへと繋げます。
5. 運用上の注意点とよくある失敗
- 主観のみで作成しない: 客観的なデータ(アクセス解析やインタビュー等)を根拠にすることが重要です。
- 定期的な見直しを行う: 市場環境やユーザーの習熟度に合わせて、マップを柔軟にアップデートする必要があります。
- 作成自体を目的化しない: 重要なのは、マップから得られた洞察を、実際の開発や運営の改善に具体的に落とし込むことです。
6. まとめ
カスタマージャーニーマップは、顧客の体験の流れを整理し、各接点や施策のつながりを可視化するためのフレームワークの一つです。
体験全体を俯瞰することで、顧客の課題や感情の変化に気づきやすくなり、部門を横断した共通認識づくりや、改善テーマの整理にも役立ちます。
新規事業の企画段階やDX推進の検討時、既存サービスの見直しを行う際には、本記事の内容を参考にカスタマージャーニーマップを作成してみるのも有効でしょう。
アツラエでは、カスタマージャーニーマップの設計支援やPoCフェーズでの仮説整理・検証のサポートも行っています。顧客体験の整理やサービス設計に関してお困りのことがあれば、お気軽にご相談ください。
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